ローコスト住宅考察
ローコスト住宅を考察しました。
ローコスト住宅を作るには、2つ方法があります。実は、3つ目に挑戦しようとしましたが、2つまでは確実に既存の考え方で可能です。
ひとつは、相対的にコストダウンを図る方法で、もうひとつは、絶対的にコストダウンを図る方法です。相対的にコストダウンを図る方法は、一般的に行われる手段であり、今回、金田さんが示されたサンプルのような手法です。ひとつひとつの見積り項目に対して、あるいは設計段階から、1平米あたりに掛かる金額を相対的に下げる方法です。建物の間取りや、シルエットは変わりませんが、各仕様が下がっていきます。希望の金額に達するまで、粘り強く行われます。私が手掛けた作品では、「バス通りの家」や「光が丘の家」で、この手法を用いました。「バス通りの家」は、RC造2階建て34.8坪を、当初2950万円から2450万円にVEしました。「光が丘の家」は、RC造3階建て145.8坪を、当初9980万円から7700万円にVEしました。ここまでのVEをするためには、3ヶ月程度はその期間を費やしています。
では、絶対的にコストダウンを図る方法とは、どのような手法なのでしょうか。それは、簡単にいうと、仕様を下げるのではなく、平米数を下げることなのです。もっと簡単にいうと、小さい家にするということです。基礎を小さくしたり、柱を細くしたり、床や壁の面積を小さくします。もちろん強度不足や、不都合な家を建てるという意味ではありません。では、どのようにすればそのようなことが可能なのでしょうか。今回の、「沖塩屋の家」は、まさにこの手法によってローコストを図ったのです。
基礎とは、建物の自重に対する反力を受け持つ部分です。したがって基礎を小さくする方法は、建物を軽くしたり、基礎の形態を工夫することで可能になります。この家は、1階床高が、GLより1.4m高くなっています。ですから、通常の耐圧版スラブ工法にすると、地中の中に耐圧版を設け、さらに立ち上がりコンクリートを打設し、1階の床をささえるスラブが必要になります。これを逆梁工法とすることにより、1階の床をささえるスラブが耐圧版を兼ねています。さらに、立ち下げる梁が地中に入る所だけ掘削すればよく、掘り手間も残土処分も省略しているのです。
柱は、規則正しく配置することにより、構造に不必要な負荷が掛からず、無駄のない断面で構成することができます。問題は、床と壁の面積を小さくすることなのですが、単純にこれを実行すれば、必要なスペースが得られないただ単に使いにくい家になってしまいます。ではどういう方法を採ったのでしょうか。これが最も重要なポイントです。
それは、スペースを共有するという考え方です。ですから、この家の室の名称は、スペース1とスペース2という空間に分けられていました。スペース1は、玄関ホール、音楽室、クローゼット、ゲストルームとしての簡易宿泊室の4つの空間を共有していました。最終的には、高級楽器を保護するために、音楽室の部分を仕切ってしまいましたが、造りそのものには当初の考え方が生かされていて、床面積は小さいのに使い勝手は広々としたものになっています。スペース2は、通常のLDKという使い勝手とパーティールームとしての要素も合わせ持っています。そしてデッキとの効果的な使用により、さらに効率的な活用が可能になっています。
このように、この家は、絶対的にコストダウンを図ることを意図し、それを実行し住み手の楽しい家が完成しています。ですから、FAXでいただいたような一覧表はこの家にはできないのです。挑戦しようとした3つ目の方法は、人が生きていく上で、もともと持ち合わせている生命力をも使って、ひとつの家を完成させようとした考え方です。これはおしくも実現していません。
わたくしの、ローコストに対する考え方を理解していただけたでしょうか。必要ならば、もっと話し合いを続けていけたら思っています。(飯田修平)2006.9