苦悩する7.5畳のオフィス


スケジュールを記したダイアリーがない。何処へ置いたのか。なにしろ7.5畳のオフィスなので、月々来る建築雑誌だけで、すぐに足の踏み場もなくなってしまう。ポッとパソコンの上にでも置いて、またその上に雑誌でも置いてしまうと、もう何処に行ったのか分からなくなってしまう。

世は、IT時代?なので、事務所なんて小さくて良いのだ。極端に言えば無くても良い。と、強がりを言ってみても、こうして身の回りを見渡して見ると、ナントモハヤ、情けない限りである。

先日こんな私の事務所に、ある建築雑誌の編集長が入った。「入った」と言うのも、変な表現だが、まさによくぞこの事務所に、「入った」のである。まぁお掛けくださいと言いながら、椅子の上に有る種々雑多なモノを、床に下ろさなければならない。それでもなんとか話をしていると、図面を見せて下さい。なんて事になったのだが、私は、目に微笑を浮かべつつ、うなずきながら、動こうとしない。じっとある方向を、力なく、見ていると、「あ」と言って立ち上がってくれる。そうしないと、図面棚の引出しが出ないのだ。

カチャカチャカチャカチャと、爪の音を滑らせながら、犬が階段を上がって来た。鼻で扉をノックしている。無視して仕事を続けていると、ほわんほわんと詰めた様に小さく鳴いている。さらに無視していると、今度は、おん、おんと大きな声で文句を言う。仕方が無いので入れてやると、極わずかに残った床部分に、でんと寝るのである。向うの棚から何かを取ろうと思うと、ホントに足の踏み場が無いので、耳とかしっぽを少し踏みながら歩くのである。かわいそうな私。え、犬?犬なの?…。

この間、ある建築家が、気に入らない事を言ったので、大声で激しく抗議した。ミットモナイ話である。弱い犬ほど、よく吠える。と言うが、まさに私の様な者の事を指した例えではあるまいか。ハズカシ…。どうも、最近私は、犬の様に、動物的に生きている様な気がするなぁ。 動物的建築家(バカ)。犬の建築家(もっとバカ)。

耳とかしっぽを踏まれてかわいそうなあの犬が、まだ小さかった頃、近くに借りていた仕事場へ出掛ける時、この部屋に、犬を入れていた。そうか、この部屋は、…7.5畳のこのオフィスは、…!! もともと犬小屋だったのだ……。2001.7 (飯田修平)