設計者の視点

日経アーキテクチュア2007.3-26 沖塩屋の家について


 Tさん夫妻と打ち合わせを重ね、何度か食事を共にするうちに、二人の人柄を知り、長くお付き合いしていきたいと思った。Tさんには、建築家に頼めばいい家になるだろうとの期待があったと思うが、私はそれを超えるものをつくりたいと考えた。プランを考えているときに思ったのは「野に咲く花のような」家にしたいということ。この場所に、ごく自然に建つ家にしたかった。

 決定案が浮かぶまで時間がかかり、Tさん夫妻を心配させてしまったが、完成後にその喜びをストレートに表現してくれて、とてもうれしかった。海側が5mの石積みの地盤だったり、ビル用サッシを採用したりとコストアップ要因もあったが、施工会社の努力もあって「ごく自然な」予算に納まった。Tさんは、自分の頭に描くイメージに沿って明確に要求する部分と、建築家に任せる部分とがはっきり分かれていた。信頼の大きさに責任の重さを感じた。(談)