建築をする
飯田修平(いいだしゅうへい)
お前は、不器用だから大工にはなれない。大工だった父に言い残されたわたくしだった。しかも高校での製図の時間は面倒で嫌いだった。ならばと、ほぼ消去法により高校卒業後わたくしは、現場監督になった。
その後七年間、実物大の現場で、汗と泥にまみれて建築を学んだ。それは、施工者として如何に設計図通りに造るか、設計図面とにらめっこしながらの日々だった。設計者は、その意図をその図面に託し、施工者はその気持ちを読み取る。そのうち、読み取ることそのものが楽しくなり、設計図面の向う側は、どんな所なのか知りたいと思うようになった。
不思議なもので、思っているとその向う側が、手招きしてくれた。わたくしにとって施工者として、最後の現場を設計した事務所から、声を掛けてもらったのだ。しかし、あれだけ嫌いだった製図を、仕事として続けていくことができるだろうか。不安もあったが、わたくしにとって最初の転機となった。
さて、今わたくしは、建築家として仕事をさせていただいている。クライアントから与えられた条件と敷地、その環境を読み取り、建築をしている。それは、単に設計図を描くということではなく、若い頃に培ったこの体に染み付いた建築感を拠り所に、クライアントの財産を託されているという責任において、現場と対峙し、厳しい目で監理もしている。施工者として、苦しんだ所を知っている強みを生かしつつ、心地の良い美しい建築を模索している。
一級建築士事務所9月の風代表