一級建築事務所 9月の風
光が丘の家
浴室の折戸サッシを全開放すると、テラスと一体利用ができ露天風呂のようになる。テラスの開口部からは、広島市内が一望できる。多忙なクライアントのために、ゆったりとした寛ぎの時間をプレゼントしようと思い計画した。この家の目玉的空間である。
浴室の見返り。正面奥は脱衣室。
エントランスとガラスブロックの壁面。
エントランスホール見返り。正面が玄関扉。天井高さ3.0m
エントランスホール正面。
エントランスホール側面。絵の左側のスリットは、階段室へ出るガラス扉。押すと開く。
2Fリビング。奥は続きの和室とデッキへの出口。
3Fリビング。堀こたつ式のテーブルは、楢の無垢材。床暖房が施してある。(2F・3F共)右側は、キッチン。天井のスリットは、エアコンの吹き出し口。
キッチン。正面の造り付け家具に、電子レンジ等が納まっている。
光が丘の家

抜群のロケーションと自然を取り込む大開口
細かい造作を排除した打放しローコスト2世帯住宅
 空に屋根を架けるだけでいいと感じた。眺望の良い丘の斜面に、切り込みを入れたような敷地。吹き渡る風を、そのまま透過させようと思った。年間降雨日数約90日という、瀬戸内海気候の恩恵を肌で感じるような穏やかな丘。ピロティで床を持ち上げれば、ステージは空中にセットできる。仕上げや細かい造作などいらないと思った。必要な空間を、シンプルなソーニングの中に落とし込むだけでいいと。そして、自らの作為的なデザイン性すら排除し、自然にそこにあるべき形を模索した。

 2世帯住宅とは
本来人間が営んで来た悠久の時間(とき)の流れの中で、普遍的で自然な形態である。親世帯と子世帯、時間(とき)が経ち子世帯が親世帯へ、そしてまた次へと。ステージは移れども、この建築とそこに暮らす人間は久しく、この空に風と大気のバランスの中で存続する。丈夫で繰り返し繕うことができるよう、装飾は不要だと思った。この家の、基本的な概念となった。

 普通合板型枠で、コンクリートを打放す。内外共、素地のまま。コンクリートで、建築をするための必要最低限の支度。そのシルエットこそ、自然。私が、この建築で追求したのは、部材を使わずに造ること。コンクリートの開口から、直接木製扉が開くようにしたのはそのひとつ。片面しかハンドルのないガラスの扉もそのひとつ。

 部材を使わずに造るためには、熟練した優れた職人と、それを束ね司る有能な現場監督が不可欠である。この現場の所長と、作業に従事した職人は、素晴らしい技術を有していた。見事な施工精度だ。ピロティに張ったケイカル板は、プレカットで搬入し現場で1か所も刃物を使うことなく、チリ0でコンクリートと取合っている。さて、私がしたことと言えば、ただ、青い空に浮かぶ飛行機雲を、少し集めただけである。(飯田修平)

1Fピロティからガラスの玄関方向を見る。