豊平の家
クライアントは、40歳の物静かな鉄道員である。若い頃は、車掌をしていたが、現在の部署は司令室である。広島管内の全列車を所管している。ひとたび災害でも起きれば、列車を緊急停止させ、乗客の安全を守るのが彼の仕事である。
 家族は、奥さんと小学生の子供が2人。2DKの社宅で、仲睦まじく暮らしている。奥さんは勿論のこと、子供たちは彼のことが大好きである。彼が家に居る時は、子供たちは彼から離れない。彼は、頼りになる立派なお父さんである。
 社宅住まいは10数年が経ち、子供たちも成長した。彼らは、都心の住まいから、Uターンをして田舎に家を建てることを思い立った。
 敷地は、広島市内から北へ車で1時間15分程の山の中である。周囲は家もまばらで、接道である県道には外灯すらない。したがって彼は、仕事が終わると、暗い夜道を自らのヘッドライトだけをたよりに、1時間以上もハンドルを切って帰宅するのである。
 子供たちは、大好きなお父さんが帰ってくるのを待っている。お母さんも、待っている。お父さんが車で帰ってくる。お父さん、お疲れ様。お父さん、有り難う。
この家は、家族全員の気持ちを、体全体で思い切り表現しているのだ。カーブを曲がれば、灯りが見える…。
お父さん、お帰りなさい。
夕景
玄関見返り
玄関 正面木製扉には丁番が見えない。こだわりのディテール。
LDK キッチンはオリジナル。ダイニングテーブルは楢の無垢材を使用している。
浴室と浴室に面したデッキ
デッキはフロストシートガラスで囲まれている。
デッキ  リビング脇のホールと一体利用ができ、空間に広がりを持たせている。
男が思い切り寛ぐスペース 板間
30坪ほどの小さな家。その内の6帖を、男のために造る。男は、備長炭の小さな炎に炙られながら、大好きな釣りの道具を弄りつつ、大好きな酒を飲む。至福のひと時。静かな時間が流れる。
 壁は、土塗り仕立て。造作は、全て楢で統一し、塗装を施さず、素朴で自然な間になるよう工夫している。
冬景色